アマゾンのprime air
アマゾンがprime airサービスというものを始めました。
ドローンによる配送で30分以内の配達ができるようです。
amazon prime air
米Amazon、ヘリコプターを使った30分以内の配達『Amazon Prime Air』を発表
amazonのprime airで使われるドローンの名前はOctocopter。タコのoctopusをもじったのでしょう。タココプターです。現在のprime airの状況をまとめると以下の通りです。
- 配送可能重量:2.3kg
- 30分以内に配送
- 連邦政府の承認が必要(つまり今は違法)
- アメリカの全配送目的地の86%をカバーできる
- アメリカ航空局の承認が得ることができれば2015年スタート
amazonによるprime airは航空局の承認次第ということですが、これがそう簡単にいくとは思えません。理由としては、droneは軍事的利用に簡単に転用可能ですし安全面の理由から、かなり突っ込まれるのではないでしょうか。
drone配送によるメリット
低価格
droneによる配送は、配送コストの低下を実現することが可能です。日本でのヤマト運輸や佐川急便などの宅配便サービスに大きなインパクトを与えると思います。
現在、東京-大阪間のヤマト運輸の宅急便代金は、840円です。このうち、東京-大阪間の長距離トラック配送のコストは約100円前後で割合としては小さいです。コストのうち大きな割合を占めるのが、集荷、訪問宅配などといった足回りのプロセスです。しかもこの足回りのプロセスの中で最も費用が掛かるのはトラックの運転手の人件費です。この人件費部分をdroneに置き換えることで、コスト革命を起こすことが可能です。私がイメージする将来の宅急便価格は下記のようなものです。
- 東京山手線内:100円
- 東京渋谷-大阪梅田間:300円
配送が低価格になることで、様々な市場が顕在化する可能性があります。
- 1000円未満の商品のEC市場
- コンビニの商品をスマホで購入して届けてもらう
- 会社にお弁当を宅配してもらう
- 低価格ピザ
drone配送の競合
drone配送には多くの既存競合がいます。
郵便
droneのメリットが低価格とした場合、郵便が最も強力な競合となるでしょう。郵便事業はたいていの国では政府の管理下に入っており、それゆえ採算度外視の低価格設定が可能です。日本でも郵便は封書で80円。類似サービスであるヤマト運輸のメール便はA4サイズを80円で全国に配送できるという驚異的な価格競争力があります。
ただし郵便にはスピードが遅いという弱点があります。droneは宅配便よりも早いスピードは可能なので、スピードで郵便に勝つポジションを採れます。
バイク便
スピードではバイク便にはかないません。しかしバイク便は非常に高額なので、安価なdroneが大きく注目されるでしょう。一刻一秒を争う場合はバイク便ですが、6時間以内に届いてくれれば良いような場合は、droneで十分です。
宅配便
宅配便はdrone配送の競合というよりは、その親となる存在です。drone配送にとって、長距離運送や仕分け作業などのプロセスは、宅配便のサービスとと共有する必要があります。drone配送は宅配便の一つの低価格オプションとして浸透していくでしょう。
drone配送の突破すべき壁
盗難
droneごと配送荷物が盗まれてしまう可能性があります。当初は保険などの手段によってクリアしていくしかないでしょう。drone配送が普及するにつれて、社会モラルが形成されていき、法整備も含めて徐々に対応できるようになると思います。
重量
重量は大きな壁です。積載終了が大きくなるとその分drone自体の機体も大きくなり機体重量も増加します。そうなると、droneを飛ばす燃料も多く積む必要が出てきます。積載重量に加速度的に比例して全体の重量が増えていきます。重量が大きくなると、燃費や墜落時の安全性で問題が出てきます。
墜落
droneは空を飛ぶので墜落します。事故のないものはありません。配送途中の荷物が壊れてしまうのはやむを得ないですが、墜落した先に人がいると大変なことになります。もっとも大きな壁はこれでしょう。解決策としては、空に道をつくる必要があります。空の道は、地上から20m程度上空、drone専用で一方通行。二車線以上の車道の中心部分、ビルの上、川などが有力な候補です。
問題は人間が歩く場所の上空です。その場合は2つの解決策が考えられます。一つ目は歩道の上に屋根を付けること。この場合、インフラ投資が莫大になり、現実的ではありません。もう一つは地上から50cm程度の低空を飛ぶことです。こちらは投資が少ない一方で、障害物や人間、車を避ける機能が必要で、現状のシンプルな機能のdroneでは対応できません。立体的に周囲を認識できるカメラとシステム、人間やペット車を判別し、それらの行動に対応できるプログラムの開発が必要となります。
amazonが本当に狙っていること
amazonが狙っているのは、現在のamazonのモール内での商品の配送だけではありません。もちろんモールの商品の配送コスト削減は中期的なターゲットにしていますが、ソベスはもっと大きなものを狙っているでしょう。それはつまり、宅配事業そのものです。
amazonは既に各主要都市に自社倉庫を持っています。また、莫大な量の商品を流通させており、その配送業者を独自に選ぶことができます。後はトラックを購入して、ドライバーを雇うだけで国内3位程度の宅配業者はすぐにでも作れる状態です。宅配便業界の利益率は高くなく、既にコストはかなり切り詰めた状態となっています。そこにdroneでの価格優位性を引っ提げて宅配便業界に革命を起こし大きなシェアを採りに行くのが狙いです。
droneの実現には、安全性、法律面などで大きな壁がありますが、現在のamazonには時間さえかければ不可能ではありません。むしろこのような壁は小規模事業者には手におえないので、amazonには優位に働きます。
droneをSFの子供だましだと笑っていると、いつの間にかまた大きな巨人が表れるかもしれません。
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